深夜のオフィス。撮影が押して、みんなでコンビニ飯をつついていたときの話です。
編集スタッフの女性が、カップの味噌汁を両手で包んだままぽつりとこぼしました。
彼氏に三年間、週三ペースで夕飯を作り続けてきたらしい。
なのに、結婚の話は一度も出ていない。
「私、料理がうまくなっただけでした」
笑いながら言うもんだから、余計にきつかった…。
胃袋を掴む。
効きます。効くんだけど、掴む場所を間違えると人生の時間だけが溶けていく。
SNSの現場で何十人ものインフルエンサーと恋愛話を重ねてきて、私はそこだけは確信しています。
胃袋を掴むって、結局なにを掴んでいるのか
語源はイギリスのことわざだった
The way to a man’s heart is through his stomach.
男の心へ向かう道は胃袋を通っている、という言い回しが元ネタ。
日本だけのローカルな話じゃないんですよね。文化圏をまたいで同じことが言われてきた。
それだけ人類が同じ場所で落ちてきた、という証拠でもある。
ちなみにディズニー映画のセリフにも出てきます。それくらい古典。
掴まれているのは味覚じゃない
ここを勘違いしている人が本当に多い。
男性が落ちているのは味の完成度じゃないんです。
自分のために誰かが台所に立った、その二十分の使われ方に落ちている。
コンビニで買えば三分。それを二十分かけた人がいる。
この差を、脳は好意として処理します。
インフルエンサーの一人が言っていたことが忘れられません。
彼女の旦那さんが結婚を決めた瞬間は、豪華なコース料理じゃなかった。
熱を出して寝込んだ夜、彼女が作った雑炊を、鍋のままテーブルに置いた瞬間だったそうです。
ぐつぐつ音を立てる鍋。土鍋の底に少し焦げがついていた。
「あ、この人と暮らすんだな」
彼はそう思ったらしい。焦げてたのに(笑)。
掴まれているのは胃じゃなく、記憶。
効果はある
手が込んでいなくても、九割が喜ぶ
簡単な手料理でも嬉しいと答えた人が、およそ九割。
凝ったフレンチじゃなくていい。ローストビーフを仕込む必要もない。
料理下手だから無理、と諦めている人にこそ知ってほしい数字です。
これは私の主観になりますが、むしろ完璧すぎる料理は逆効果になることがある。
「この人にはかなわない」と、相手が一歩引いてしまうんですよ。
ちょっと不格好な卵焼きのほうが、距離を詰める力は強い。
掴まれた男に出るサイン、出ないサイン
一緒に作ろうと言い出したら、ほぼ本命
現場で見てきて、いちばん信用できる合図がこれ。
また作って、じゃないんです。
一緒に作ろう、なんです。
前者はサービスの受け手。後者は生活を共有する側に回った合図。
この一言が出た数か月後にプロポーズされた人を、私は何人も知っています。
ほかにも、リクエストが具体的になる。あの味噌汁もう一回飲みたい、みたいな。
調味料や食材を勝手に買ってくるようになる。
自分の家族や友人の前に連れていこうとする。
このあたりが揃ってきたら、掴めています。
感想も片付けもないなら、まだ掴めていない
食べ終わって、うまかった、で会話が終わる。
皿は流しに置かれたまま。
誘われるのは、いつも夕飯の時間帯だけ。
これ、掴んだんじゃなくて、掴まれてる側です。
落ちた男は必ず、返してきます。
洗い物を奪いに来るか、食材費を出そうとするか、次はどこか食べに行こうと言うか。
何も返ってこない関係を、愛情と呼ぶのはやめたほうがいい。
私は割とはっきり、そう思っています。
三年作り続けても、結婚できない人の共通点
そもそも相手が、食にこだわらないタイプだった
これがいちばん多い。しかも本人が気づいていない。
食べることに執着のない男性は、実在します。牛丼で完結する人。
彼らにとって食事は燃料の補給であって、感動の対象じゃない。
そういう相手に手の込んだ料理を出し続けても、届くのは感謝止まりで、恋にはならないんですよね。
効かない相手には効かない。武器の選択ミスというだけの話。
見極め方は簡単で、付き合い始めに好きな食べ物を三つ聞いてみるといい。
即答で具体的な店名や味の話が出てくるなら、料理はよく効きます。
なんでもいい、が返ってきたら、別ルートを探したほうが早い。
居心地だけ渡して、未来の話を避けてきた
冒頭のスタッフがまさにこれでした。
彼女は完璧に快適な環境を提供し続けた。
ほかほかのご飯、洗濯された部屋着、文句を言わない自分。
男性側からすると、変える理由がどこにもない。
今のままで最高なのに、なぜわざわざ籍を入れるのか、と。
これは残酷な話なんですが、居心地の良さは現状維持を強化します。
掴んだあとに一度だけ、未来の話を持ち出すこと。
そこをサボると、三年が溶けます。
ずっと一方通行のままだった
食材費を全部負担している。
会うのは常に彼の家。
彼女の部屋に彼が来たことは数えるほど。
この構図、外から見ると一発でわかるんですが、中にいると見えないんですよ。
一度、断ってみてください。今週は無理、とだけ。
そこで拗ねるか、じゃあ俺が作るよと返ってくるか。
胃袋を掴むは古い、と言われ始めた理由
共働き世代が見ているのは、腕前じゃなく分担
最近の若い層は料理スキルそのものより、一緒に料理を楽しめるか、家事を分け合えるかを重視する傾向がはっきり出ています。
共働きが前提になった以上、当然といえば当然。
女性だけが胃袋を掴めと言われる構図に、そもそも違和感を持つ人が増えました。
女心を掴むにはまず胃袋、という逆の言い回しを聞いたことがある人、いますか。
ないでしょ。おかしな話です。
作るより、隣に立つほうが刺さる時代
とはいえ、料理が武器じゃなくなったわけじゃない。
使い方が変わっただけ。
出来上がったものを差し出す形から、二人で作る形へ。
狭いキッチンで肩がぶつかる。包丁の音が重なる。味見のスプーンを差し出す。
あの数十分のほうが、完成品よりよほど関係を進めます。
断言しますが、これからの胃袋掴みは共同作業型が本命です。
女性の胃袋を掴む男が、いま反則級に強い
競争相手が、ほぼいない
男性読者に向けて書きます。ここ、完全に空いてます。
料理をする男性は増えたけれど、恋愛の武器として意識的に使っている人はまだ少数派。
女性の側は、料理ができる女性という基準で長年比較され続けてきました。
その比較の外側から来る男性が、どれだけ効くか。
知り合いのカメラマンが、初デートの帰りに彼女を家に呼んで作ったのが、鍋。
それだけ。市販の鍋つゆに、切った野菜を放り込んだ鍋。
なのに彼女はその夜のことを、今も友人に話しているそうです。
ふわっと湯気が上がった瞬間に、この人ちゃんと生活してる人だ、と思ったらしい。
男性の料理はハードルが低い分、リターンが異常に大きい。
何を作るかより、何を覚えているか
女性を落とす料理に、技術はいりません。
必要なのは記憶力です。
辛いのが苦手だと言っていた。パクチーが好きだと言っていた。生理前は甘いものを欲しがっていた。
それを覚えていて、次に出す。
覚えていた、という事実そのものがごちそうになる。
ドキッとするのは、味じゃなくてそこなんですよ。
明日から動くなら、ここから
頻度と場所を固定しない
週三で彼の家、を続けると、ありがたみは確実に薄れます。
週一か二で十分。むしろ足りないくらいがいい。
場所も、たまには自分の部屋に呼ぶ。
来てもらう側に回る回数を作っておかないと、いつのまにか通う人になります。
これは尽くすのをやめろという話じゃなくて、安く見られないための話。
味噌汁が最強
現場で聞いてきた成功例の再現率がいちばん高い料理、味噌汁です。
理由は三つあって、まず失敗しにくい。次に、外食では絶対に出てこない。
そして毎日飲めるから、記憶に上書きされ続ける。
豪華なローストビーフは一度きりの感動。味噌汁は、日常に居座ります。
恋愛で効くのは、後者のほうです。
掴むという言葉を使うと、どうしても捕まえるイメージになってしまうけれど、実際に起きているのはもっと地味なこと。
帰りたい場所を、一つ増やしているだけ。
その場所に、相手も立てるようにしておく。それが一番効きます。

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