打ち上げの席で、後輩スタッフがぽつりとこぼしました。あの人のえくぼ、ずるいですよね、と。
その場にいた全員が、なぜか無言でうなずいた。
私も同じことを思っていたので、笑ってごまかしましたけど(笑)。
顔のパーツひとつで、こんなに空気が動くものかと驚いた夜でした。
ただ、この話には裏側があります。えくぼを褒められ続けてきた人が、実はずっと苦しんでいた、という話です。
えくぼを見た瞬間に心が動いてしまう理由
丸い頬に弱いのは、人間のクセ
えくぼが浮かぶと、頬に丸みが生まれます。この丸みが、人の脳にある古いスイッチをふわっと押してくる。
動物行動学者のコンラート・ローレンツが提唱したベビースキーマという考え方があります。丸い頬や大きな目といった赤ちゃんらしい特徴に対して、人は世話をしたくなる感情を自動的に抱く、というもの。
守りたい、という気持ちは、意思で止められません。
だから、えくぼに惹かれる自分を浅いと責める必要はゼロ。あなたの理性が負けたわけじゃなく、そもそも勝負になっていないんですよ。
持っている人が少ないから価値が跳ね上がる
えくぼは、努力で手に入りません。
スキンケアも、メイクも、筋トレも届かない場所にある。
人は手に入らないものほど高く見積もる生きものです。限定販売のスニーカーに列ができるのと、心の動きは同じ。
えくぼが恋愛でやたらと強いのは、可愛さの質が高いからというより、代替がきかないからだと私は見ています。
笑わないと出てこない、という条件つき
えくぼは、無表情のときには存在しません。頬の筋肉が動いて、はじめて姿を現す。
つまり、あなたが見たそのえくぼは、その人があなたに向けて笑った証拠なんです。
写真集の中の顔じゃない。目の前で起きた出来事。
ドキッとする理由は、可愛いからじゃなくて、心を開いた瞬間に立ち会ってしまったからでしょうね。
そもそも、えくぼはどうしてできるのか
頬の筋肉と皮膚の関係
口角を引き上げる大頬骨筋という筋肉があります。この筋肉が枝分かれしていたり、繊維が短めだったりすると、笑ったときに皮膚が内側へ引っ張られる。そのへこみが、えくぼ。
生まれつきの体のつくりによるもので、性格の良さとは無関係です。
にこにこしている人ほどえくぼができる、という話をよく聞きますが、逆ですね。笑う回数が多いから目立つだけ。
優性遺伝という説明は、少し雑
えくぼは優性遺伝、と学校で習った記憶がある人も多いはず。
実際には、そこまできれいに法則どおりにはなりません。親にえくぼがあっても子に出ないことがあるし、その逆もある。
不規則な現れ方をする形質として扱われています。
片方だけにえくぼが出る人がいるのも、左右で筋肉のつき方が違うから。左右対称じゃないことを気にしている人がいますが、あれこそ人工的につくれない魅力だと思うんですよね。
えくぼを褒められた側は、本当は何を思っているのか
うれしいのに、じわじわ落ち込む
インフルエンサーで活動している女性から、こんな話を聞いたことがあります。
えくぼ可愛いね、って十年以上言われ続けてきた。最初はうれしかった。でも今は、ぐさっとくる日もある、と。
理由を聞いて、私は言葉に詰まりました。
自分が何を考えて、どんな仕事をして、どれだけ準備してきたか。そういうものは誰も見ていない気がしてくるらしいんです。
えくぼしか褒められない。
パーツだけを褒める言葉が刺さらない理由
えくぼは、その人が努力して手に入れたものじゃない。
だから褒めても、本人の手柄になりません。
親の遺伝子を褒めているのと同じ、という言い方をした人がいて、うまいこと言うなと感心してしまった。
ここを外している人が、恋愛でめちゃくちゃ損をしています。
好きな人のえくぼ、どう褒めれば記憶に残るのか
やらかしがちな三つの地雷
触ろうとする人。これは論外です。相手の顔に手を伸ばした時点で、可愛いと思っていた気持ちごと不快感に変換されます。正直なところ、この点だけは絶対にやめてほしい。
えくぼだけを繰り返し褒める人。相手を不安にさせるだけ。
そして、他人と比べる褒め方。誰々よりえくぼが深いね、と言われて喜ぶ人を、私は見たことがありません。
パーツではなく、瞬間を褒める
言い換えは、そんなに難しくないです。
えくぼ可愛いね、を、さっき笑ったとき、こっちまで力が抜けたよ、に変える。
主語が相手の顔から、あなたの心の動きに移ります。
その話してるときの顔、いちばんいいね、も強い。何を話していたかを見ていた証拠になるから。
今の顔、もう一回見たいな、はかなり効きます。ただし、言い方を間違えるとただの軽い人になるので、目を見て、一度だけ。
私はこの言い換えがいちばん確実だと確信しています。相手の内側に触れながら、顔の話もちゃんとしている。
えくぼを褒められたのは、脈ありなのか
言葉が誰に向いているかで判別できる
判断材料は三つあります。
まず、その人が他の人にも同じことを言っているかどうか。飲み会で全員に配っているタイプなら、残念ながら社交辞令。
次に、えくぼが可愛いと言うか、笑った顔が好きだと言うか。前者は観察、後者は好意に近い。パーツを語る人と、瞬間を語る人では、見ているものが違うんです。
最後に、褒めたあとに視線を外すかどうか。照れて逸らす人は、たいてい何か抱えていますね。
えくぼのある男性が、ずるいと言われる理由
ギャップが効きすぎる
女性スタッフたちと雑談していたとき、話題がある男性に移りました。
普段むすっとしてるのに、笑うとえくぼ出るの、あれ反則。
その場が、へにゃっと崩れたのを覚えています。全員同意(笑)。
男性のえくぼが強いのは、可愛いからじゃありません。普段の印象との落差が大きいから。
静かな人、クールな人、少し怖そうな人ほど威力が跳ね上がる。
無防備な一瞬を見せられると、人は勝手に距離を縮めてしまうんですよ。
ただし、仕事の場では足を引っ張る
いいことばかりじゃない。
えくぼのある男性は、幼く見られやすい。頼りない、軽い、と受け取られて損をしている人を何人も見てきました。
本人が気に病んでいるケースも多いです。
使い分けができれば、これは最強の武器になります。仕事では姿勢と声のトーンで重さを出して、プライベートで笑う。落差が大きいほど刺さる、という話と同じ理屈ですね。
えくぼがない人は、恋愛で不利なのか
不利です。ある一点においては。
そこを認めないまま慰めても、意味がないと思うので正直に書きます。
ただ、えくぼの正体は、笑ったときに顔が変化することでした。変化そのものが人の心を動かしている。
だとしたら、勝負するべきは頬のへこみじゃない。
無表情から笑顔までの落差、目が細くなる速さ、笑ったあとに一瞬残る余韻。ここは全部、鍛えられます。
SNSの現場にいると、笑顔の写真が伸びる法則がはっきり見えるんですが、伸びているのは整った顔じゃないんです。
撮られた瞬間に、本当に楽しそうだった人。
えくぼがある人の写真が強いのは、笑っていないと写らないから。つまり必然的に、いい表情の一枚が残る。
だったら、こちらは意識して笑えばいい。それだけの話でしょ。

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